吉野 英男
高校2年生の時、貯めた小遣いを握りしめて最初に買ったのはアコースティックギターでした。折しも世の中の音楽はエレキやシンセサイザー全盛の時代です。すぐにエレキを弾きたい気持ちもあったのですが、「本当にうまくなりたかったら、アコースティックから始めるのがよい。」と雑誌のコラムに書かれていた台詞を信じました。しばらくしてエレキも手にするようになり、仲間とロックバンドを組んで、アマチュアながら20年あまり活動することができました。社会に出て、家庭を持ち、次第にバンド活動が思うようにできなくなってからも、ギターはずっと私の大切な友でした。1人でライブを演ろうと思ったとき、自然にアコースティックギターを手にしていました。
ギター演奏は、練習や経験だけでなく、演奏者の才能やセンスによるものがありますが、私のようなアマチュアが楽しもうとするとき、リペアやチューンナップによって、好みの音、弾きやすいセッティングに近づければ拙いテクニックがカバーできると思い、よく自分で機材を調整しました。しかし、ネックストレートに難が出たり、フレットの打ち替えといったことになるとショップや工房のお世話になることもありました。その結果、うまく改善されたこともあれば、そうではなかったこともありました。それならいっそ、プレーヤーとしての目線を生かしながら自分でできないだろうかと考え、そこから私の独学が始まりました。
リペアやチューンナップの方法を一つずつ覚えては自分の機材に施し、よくなったと言ってはライブを演りに出かけました。次第に、音楽仲間、店のご主人やスタッフさんに「素晴らしい音だ。」と評価していただけるようになり、友人知人のリペアやチューンナップも引き受けるようになりました。自分のやってきたことは間違っていなかったんだと思いました。
リペアやチューンナップを必要としているギターが抱えているトラブル、状態は様々で、日々試行錯誤です。振り返ってみると、初めてボディにドリルで穴を開けたとき、熱を加えたとき、塗装を吹いたとき、それぞれに大変緊張しました。それでも、ライブ会場で、自分や仲間の素晴らしいギターサウンドが聞こえてくると「ギターの響きで音楽が生き生きとしている。」と感動しました。
もともと私はモノ作りが好きで、芸術や職人にあこがれていました。ギターは楽器です。響きにこだわり、響きを引き出し、響きを楽しむ。「Resonance Guitars」という名前には、私のそんな思いが込められています。